ストレートで飾らない歌詞をさまざまな曲調にのせて歌うNakamuraEmiが、メジャー2枚目アルバム『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』をリリースした。
笑ゥせぇるすまんNEWのオープニングソングとなった「Don’t」や、SNSやハラスメントについて一石を投じる「かかってこいよ」などデリケートなテーマにも果敢に挑んたアルバムで、今に疲れてしまった人にこそ聞いて欲しいアルバムだ。
この記事では、NakamuraEmi『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』をレビューする。
01.Don’t(Album mix)
先行リリースされていた「Don’t」で『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』がはじまる。
鋭いギターとドラムが、曲の内容とマッチしていて歌詞のイメージを体現している。
笑ゥせぇるすまんNEWのオープニング曲でもある「Don’t」の歌詞は、笑ゥせぇるすまんのテーマでもある、人の欲望がテーマになっている。
ほろ酔い位が丁度いいのにどんどん手が出る美味しいお酒
ナチュラルぐらい位が丁度いいのどんどん濃くなる厚化粧手に入れたい 満たされたい 気持ちがいい 一歩折れたらどツボ
NakamuraEmi「Don’t」より引用
昔話で教わった 欲張りは後で懲らしめられる
まさに欲への渇望と、欲に溺れることへの警告だ。喪黒福造がお客様に伝える警告そのものと言える。
「Don’t」は、自らを律して、喪黒の誘惑にも負けず、子どもに見せられるような大人であれというメッセージが詰まっている曲だ。
実は歌詞の中でも笑ゥせぇるすまんへの愛情が入っている。
おいおい子どもがお前を見てるぞ うつつを抜かせばスキマは真っ黒
NakamuraEmi「Don’t」より引用
スキマというのは、喪黒のセリフと名刺への愛情だ。
喪黒は「お客様のココロのスキマ」という言葉をよく使う、名刺にも入っているほど。
「スキマ」がカタカナなのも、NakamuraEmiのこだわりだろう。
そして、真っ黒というのも喪黒をかけているように感じる。笑ゥせぇるすまんへの愛が伝わってくる歌詞だ。
えむ
『Don’t』と「ドーン!」がかかってるとかいないとか……。
02.N
繰り返されるギターフレーズがNakamuraEmiの歌を最大限に聞かせてくれる『N』は、パラアスリート中西麻耶選手との対談で生まれた曲。
NakamuraEmiも中西麻耶も言葉を着飾るタイプの人間ではなく、すごく人間味にあふれた強い人だ。
でも世の中は強い人だけじゃない。
少しの声かけもできず、横を足早に通り過ぎてしまう人もいる。
それはお互いに理解が出来ていないから、話し合えないから。
それをストレートに伝えてくれる「N」は人との関わりを思い返す曲になるはずだ。
03.かかってこいよ
メッセージ性の強いダンスが印象的なMVが記憶に残る「かかってこいよ」
NakamuraEmiが「この時代、ちょっとおかしくない?」という思っている歌詞とAメロのネットリ感がピタリとハマっている。
SNSで投げつけられる辛辣な言葉や、どんどん種類が増えていくハラスメントに警笛を鳴らし、人と人が面と向かって話し合うことの大切さを訴える歌詞はこの時代のあり方を問う。
気軽にコミュニケーションを取れる時代になったからこそ、相手を思いやることが大切なのだ。
04.新聞
やさしい音楽が空間を包む「新聞」
懐古主義だと言われてしまうかもしれないが、今だからこそ良かったと思うことがある。
「好きな人の家に電話かけて 誰が出るかわからないあの緊張は覚えてる」
NakamuraEmi「新聞」より引用
私も好きな女の子の家に電話するときは、とても緊張していて男兄弟が出たらどうしようとか、お父さんが出たら「間違えました」って電話を切っちゃおうかとかシミュレーションしていた。
今はスマホが普及していて、そんな緊張がないはずだけど、家電に電話をする試練が愛を図る基準になっていたんだなと思う。
「どんどん便利になったから どんどん面倒が溢れて
NakamuraEmi「新聞」より引用
でも全然人の心は いつまでたっても便利にならない」
私が子供の頃から考えたらいろんなモノが進化してすごく便利になった。
でもモノを使うのは人。人は「心」で動くから機械のようには進化しない。
「手間はちゃんと真心になる」
NakamuraEmi「新聞」より引用
つい最近までは安くてソコソコの品質なら何でもいいと思っていた。
でも思いが込められたモノを見たときに気持ちが変わった。
見えない使い手のために日々精魂込めて作っている職人たちが作り出すモノには魂がつまっていて真心であったかく感じるのだ。
「新聞」は便利と不便の意味を考え直すタイミングをくれる。
05.波を待つのさ
まったりとしたリズムが海辺に誘う「波を待つのさ」
やさしいサウンドのなかで、ベースが曲全体をズッシリと支えている。
海の上では 金も学歴も通用しない
NakamuraEmi「波を待つのさ」より引用
自分の軸が一番大事 ぶれてる場合じゃない
自然を相手にすれば、どんな「贈り物」も意味をなさない。
金持ちだろうが貧乏だろうが、海は平等だ。
「続ける」というしっかりとした軸があるか。
付属品の無い本当の自分に向き合い、乗るべき波を待てばいい。
06.星なんて言わず
切ないピアノから夜空を連想する「星なんて言わず」
私が子供の頃は親戚が亡くなると「星のなった」と聞かされていた。
でもなぜ「星」になるのだろう。それは「花」でも「風」でもいい。
手帳に挟んでる写真に収まったでもいい。
大切な人がどこかで見守ってくれていれば、「星」じゃなくてもいい。
07.教室
軽やかなサウンドで楽しさを感じさせる「教室」
「自慢じゃないが夢見る力より 負の妄想力に長けていて
NakamuraEmi「教室」より引用
怖い 逃げたい 怖い やめたい 失敗したら非難される
それは夢のように膨らみ この世の終わりみたいに
大事な人が死ぬより かすり傷なのに」
私は早くから教室の外を見ることが多かった。
中学生のときには大人に混じって鹿島アントラーズを応援していたし、高校生のときには大人とバンドをやっていた。
子どもだからって、教室だけが世界の全てじゃない。
何かをすごく恐れることもあるけど、それなら他の世界に出ればいい。
「教室」は世界の広さを教えてくれる。
08.モチベーション
NakamuraEmiのカウントからはじまる「モチベーション」
バンドサウンドにホーンセクションが入り、ラストトラックにふさわしい華やかさ。
元OLらしい歌詞にはウンウンとうなずいたり、少し笑えたり、楽しい気分になれる。
「たかが仕事されど仕事 華やかにするかどんよりするか
NakamuraEmi「モチベーション」より引用
私次第だった」
好きな仕事に就けなくて、仕事へのモチベーションがなくても、自分次第で毎日は変わる。
ただボケーッと日々を過ごすのか、少し変えてみるのか「私次第」
NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5 総評
『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』はNakamuraEmiが自分の生き様を改めて示したアルバムだ。
MVになった「Don’t」「かかってこいよ」では、大人の姿勢を正す。
「N」「新聞」では素直に気持ちをつづった。
NakamuraEmiの楽曲はリスナーの気持ちを奮い立たせるカンフル剤だ。
この時代に少し引っかかりを持つ人少なくないと思う。
そんな人には『NIPPONNO ONNAWO UTAU Vol.5』からNakamuraEmiの魂を受け取って欲しい。
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