私はバンドのメンバーとして活動したのちに、バンドに所属せずに音楽活動を行うフリーのサポートドラマーになりました。
その結果、幸いにもいろいろな人の手助けによって、バンド時代よりも収入は増え、音楽でお金を稼ぐことができました。
バンドや、事務所・レーベルから抜けるとCDの売上やライブの動員への不安もなくなりますし、人間関係のしがらみも少なくなるので、楽器を演奏すること自体が好きな人はサポートミュージシャンになるのも一手だと思います。
この記事では、実際にフリーのサポートドラマーとして活動していた私が、サポートミュージシャンになるために必要な能力と素質について書いていきます。
もしバンドを抜けて、サポートミュージシャンになりたいと思っている人の参考になれば嬉しいです。
関連記事 「タダで仕事をしていたサポートドラマーを立派なプロミュージシャンに変えた話」を読む
サポートミュージシャンに必要な能力と素質
まずは私がサポートドラマーをやってきたなかで、サポートミュージシャンに必要だと思ったものを上げます。
- 最低限の演奏技術
- 音楽活動の知識
- バンドや関係者とのコミュニケーション
- 人の楽曲を演奏することが苦にならない
- スケジュール管理
- ギャラの交渉
次にそれぞれの能力について掘り下げて行きたいと思います。
最低限の演奏技術
最低限の演奏技術とは?
最低限の演奏技術とは、自分が演奏したいジャンルの有名曲をミスなく演奏できる程度の技術のことです。
目指すジャンルによって必要な技術は変わります。
メタルバンドでツーバスが踏めるか、ジャズバンドでレガートができるか、プログレバンドで変拍子を理解できるか。
ここで上げた例はそのジャンルのドラマーであれば誰しも出来ることばかりです。
有名曲・人気曲にはそのジャンルに必要な要素が充分に含まれているので、自分が最低限の演奏技術を持っているかのものさしになります。
自分が演奏したいジャンルの有名曲をミスなく演奏できる程度の技術
なぜ最低限の演奏技術が必要なのか
演奏技術はつたなくても、ごまかしながらでもなんとかなるのではないか。
ハッキリ言えば演奏がイマイチでも仕事はもらえます。
それはそのサポートミュージシャンがすごいコネを持っていたり、演奏は荒いが飛び抜けてライブ映えするなど、演奏以外にかなり光るものがある人だけです。
多くのサポートミュージシャンは演奏をすることでギャラをもらっています。
私が仕事を受けていたバンドで、まだ売れていないバンドがいました。
そのバンドのメンバーたちは、お金を稼ぐために必死でアルバイトして、給料のなかから私にギャラを払ってくれていました。
寝る間も惜しんで働いた給料からギャラを払う相手が、リズムがヨレヨレのドラマーやコードを間違えまくるギターだったらどうでしょうか?
彼らは私を使わずに別のミュージシャンを使ったでしょう。
きちんとギャラをもらいたいなら主力商品である・演奏をギャラに見合うレベルにあげましょう。
バンドからの期待に答えるため
最低限の演奏技術を身につけるためは?
自分には最低限の演奏技術がないなーと思ったら、やりたいジャンルの有名曲、人気曲を完コピできるようになるまで練習しましょう。
サポートドラマーになった当初の私は、大した実力もなくて25分のライブで何回もミスをしていました。
2,3回目のライブのあと、こんなに酷い演奏をしていたらクビになるんじゃないかと不安になり、そこから火がついたように練習しました。
仕事をもらっているバンドの曲を練習するのはもちろんのこと、私が演奏するジャンルで今売れているバンドの曲を全部コピーしてみました。
戦略的に売れようと考えているバンドは、流行っている曲の要素をどんどん取り入れます。
それを先回りして流行っている曲の要素を自分のなかに取り込んでいれば、いざバンドから曲を渡されたときにこれに近いものやったなーと感じられて、すんなり演奏できます。
やりたいジャンルの有名曲、人気曲を完コピする
音楽活動の知識
音楽活動の知識とは?
音楽活動の知識とは、ライブ、リハーサル、レコーディングなど音楽活動に関する知識のことです。
ケッ!知識なんてと思う人も多いですが、知らないと損をすることもあるので、しっかり把握しておきましょう。
関連記事 「元バンドマンがライブリハーサルについてまとめてみた」を読む
たとえば私が書いたライブリハーサルの記事→ライブリハーサルについてまとめてみた
ライブ、リハーサル、レコーディングなど音楽活動に関する知識
なぜ知識が必要なのか?
ライブでもレコーディングでも、バンドはわざわざギャラを払ってサポートミュージシャンを呼びます。
プロのミュージシャンを呼んだはずなのに、ライブのサウンドチェックってどうやるんですか?なんて聞かれたら、プロを呼んだのか素人を呼んだのか分かりません。
バンドに余計は負担をかけないためにも、音楽活動していれば分かる知識ぐらいは身につけましょう。
その姿がスマートであるほど、バンドからは尊敬されますよ。
バンドに迷惑をかけず、プラスアルファを与えるため
知識を得るためにバンド経験を積む
音楽知識を得るなら、バンド活動をしているうちに学ぶのが一番です。
初めてバンドをやるときは誰もライブリハーサルのやり方も知りませんし、レコーディングのコツなんかも分かりません。
その時に、これはどうしたらいいですか?上手くいくコツはありますか?と周りにいっぱい質問しましょう。
バンドをはじめた頃は誰しも優しくしてくれるので、分からないですと正直に言えばきちんと説明してくれます。
私がバンドをはじめた時は、人に聞くのが恥ずかしかったので先輩たちの行動をずっと見て、盗んでました。
そのうち仲が良いバンドマンの友達が出来て、いろいろ意見交換できるようになりますよ。
バンド活動をしているうちに学ぶ
バンドや関係者とのコミュニケーション
コミュニケーションを取る理由
なぜサポートミュージシャンがコミュニケーションにこだわるのか。
それはコミュニケーションが仕事につながるからです。
バンドとのコミュニケーションは絶対欠かせません。サポートの仕事があるのもバンドあってものです。
もちろん媚びる必要はありませんが、雑談したり、悩みを相談されたりできる関係性を作っていれば、演奏技術や知識が劣っていてもバンドからは信頼され、仕事がもらえます。
バンドが事務所に所属していれば、マネージャーなど事務所の人間とも円滑にコミュニケーションを取っておくことをおすすめします。
私はバンドとは仲良くやってるから大丈夫だろうと思っていた仕事が、事務所の意向で突然無くなったことがあります。(今考えれば失礼だった……)
その場合ギャラを払っているのは事務所側ですから、適度にコミュニケーションを取る必要があります。
そして対バンのイベントでは他のバンドとも仲良くしておきましょう。
なにも挨拶回りしろという意味ではありません。挨拶をして、少し同じ楽屋で一緒になったら雑談する程度です。
私はそれがきっかけで仕事を頂いたのが、今までで一番多いです。
コミュニケーションは過度にやる必要はありません。
必ず挨拶。少し間があけば雑談して、相手を話をしっかり聞く。それだけでも仕事につながります。
コミュニケーションで仕事が円滑に進む
コミュニケーションが苦手なら
コミュニケーションを取るのが苦手なら、本当に尊敬できる人に話かけましょう。
私も元々コミュニケーションを積極的に取るタイプではありませんでしたから、ライブハウスで他のバンドと一緒になっても挨拶をする程度でした。
しかし、演奏がとにかく上手い人や、ライブパフォーマンスがかっこいい人にはすぐ話しかけていました。
尊敬する存在と話せる機会なんて滅多にないですから、意気揚々と話しかけました。
それからその人のバンドマン友達を紹介してもらったりして、どんどん交友関係が広くなり、バンド関係者と話す機会が増えました。
同じレベルの人とは話すことがないと思っていても、尊敬できる人がいればいろいろ吸収したいと思うはずです。
そのパワーを利用してコミュニケーションに慣れていきましょう。
本当に尊敬する人をに話しかけてみる
人の楽曲を演奏することが苦にならない
能力というよりも素質に近いのですが、人の楽曲を演奏することが苦にならないかは、サポートミュージシャンに取って重要なポイントです。
今までバンドで演奏していたミュージシャンは、自分で曲を作ったり、自分のパートをアレンジしたりしていたはずです。
サポートミュージシャンになると、基本的には人の曲を忠実に演奏することが求められます。
もちろんガンガンアレンジしちゃってください!と言ってくれるバンドさんもいますが、ほとんどはコピーです。
コピーを凌駕するぐらいの演奏で自分の色を出すのが、サポートミュージシャンの醍醐味でもありますが、自分の作ったものを届けたいと思っているミュージシャンに向きません。
1から作ったものを届けたいと思うなら→バンド
演奏でギャラをもらいたいと思うなら→サポートミュージシャン
と考えてください。
楽器を演奏することが自体が好きな人や、アレンジが苦手な人には天職だと思いますよ。
スケジュール管理
スケジュール管理が重要な理由
サポートミュージシャンになるとスケジュール管理をするのはすべて自分です。
バンド時代にバンドのスケジュールを他のメンバーやマネージャーにまかせっきりだった人は要注意かもしれません。
サポートの仕事をもらえるようになると各バンドのスタジオリハ、ライブ、ツアー、レコーディングなどが複雑に入ります。
各バンドから事前に連絡はありますが、パッと見て予定空いてるからオッケー!なんて気軽に返事をするといびつなスケジュールが出来上がってしまいます。
何も考えずにスケジュールを組むと、本来は1日でまとめられるリハーサルが2日に分かれてしまったりして自分が自由に使える時間が減ってしまいます。
私は自分のバンドが事務所に所属する前からバンドのスケジュール管理をしていましたし、マネージャーと仕事の可否も話していたので、スケジュール管理は苦になりませんでした。
そのうちスケジュールを上手く組むことが楽しみになって、いっぱい書き込める手帳を買いました(笑)
無駄な時間を作らないようにするため
スケジュール管理が苦手なら
今までスケジュール管理を他のバンドメンバーやマネージャーに任せていて、自信がない人はバンドから連絡があったときに一度折り返して連絡するようにしましょう。
バンドから与えられたリハーサルの候補日のどの日にちを選べば、自分が自由に動けるのか確認してから返事をしましょう。
もちろん何日も寝かせるのはNGです。
日にちを決めた時点ですぐ連絡しましょう。
一度自分で日程を組んでからバンドに返事をする
ギャラの交渉
ギャラの交渉が一番ツラい
プロとしてサポートミュージシャンをやっていくにはギャラの交渉は避けて通れない道です。
私も一番苦手で「お前レベルでこんなに取るのかよ」とか思われているんじゃないかと不安でした。
新しいバンドや、新しい仕事が出るたびにビクビクしていたので、ギャラ交渉がしたくないあまりサポートドラマーをやめようかとも思いました。
ギャラの価格表を作る
毎回交渉していたら心が壊れそうだと思い、サッと送れる価格表を作りました。
ライブは1日◯円、リハは1時間◯円、ツアーは◯円✕拘束日数、レコーディングは1曲◯円というようなものです。
仕事の依頼がきたら、内容を聞いた上で先に価格表を送ります。
そこで相手が難色を示すようであれば、縁がなかったものだとあきらめることができ、ギャラで仕事の線引きができます。
もし設定したギャラを下回る依頼があった場合は、その仕事を受けることによって得る副産物※がギャラに見合わなければスパッと辞退するべきです。
※知名度のあるバンド、他のコネが出来るイベントに出られるなど
ギャラはサポートミュージシャンの価値の証明です。
弱気にならず、自分が必要だと思う金額を設定しましょう。
ギャラの価格表を作って交渉の機会をなくす
万能型を目指す必要はない
いざサポートミュージシャンになったからといって、なんでもできる万能ミュージシャンになる必要はありません。
自分の得意分野に特化してもいいのです。
ライブ特化ミュージシャン
細かくカッチリした演奏は苦手だけど、パフォーマンスがライブ映えするミュージシャンは、ライブに特化したミュージシャンを目指しましょう。
ロックバンドのライブで、つまらなさそうに黙々と演奏しているミュージシャンがいたらオーディエンスは冷めてしまいます。
そんな中で、俺はバンドメンバーだー!というぐらいライブを楽しんでいるミュージシャンがいたらどうでしょうか?
オーディエンスもライブの熱が冷めることなくライブが楽しめるはずです。
演奏中に少しオーバーなアクションをすることが苦じゃない人や、ライブの雰囲気が好きな人はライブ特化ミュージシャンを目指しましょう。
ライブが楽しめる人であれば、楽しみながらギャラがもらえる最高の環境になります。
スタジオ特化ミュージシャン
人前に出るのは苦手だけど、演奏技術には自信があるという人はスタジオ特化ミュージシャンになりましょう。
デモ音源を渡されてアレンジしたり、譜面を渡されたりして、レコーディングすることに慣れている人なら、おすすめです。
自分のレコーディングが長くなるほど、バンドや事務所が払う費用は増えるので、機材の選定からレコーディングまでスムーズに行う必要があります。
レコーディングが予定時間より早く終わったり、想定以上のアレンジを入れたり(求められた場合のみ)すれば、メンバーや事務所にとても感謝されます。
お客さんのリアクションに一喜一憂する必要もありませんし、あくまで仕事を淡々とこなしたい職人タイプの人はスタジオ特化ミュージシャンになることをおすすめします。
どんなミュージシャンになればいいか分からなかったら
まずはライブもレコーディングも仕事を受けてみましょう。
どちらの仕事をこなしてみてどちらも好きだと感じたら万能型を目指せばいいですし、やっぱりライブが好きだなーと思ったらライブに特化してもいいのです。
ライブに特化したからと言ってレコーディングの仕事がこないわけでもありません。
自分が決めた路線を途中で変えられるのもサポートミュージシャンの良さです。
バンドだけがミュージシャンの生き方じゃない
音楽をやるとなると、ボーカル以外の楽器はまずバンドを組むことを考えます。
そして多くの人がそのままバンドで活動し、あまりに稼げずに業界から去っていきます。
でも、自分の演奏に自信があったり、実は曲作るより楽器を演奏するほうが楽しいという人はサポートミュージシャンという選択肢もあります。
アーティスティックな部分は少なく、渡された物を忠実に再現する職人っぽいところもありますが、それが苦にならないミュージシャンにとっては最高の仕事です。
バンドとして売れなかったから音楽を諦めるのではなく、サポートミュージシャンとして生きる道も模索してもらいたいなと思います。
まとめ
これからサポートミュージシャンを目指すなら、この能力を伸ばしていきましょう!
- 最低限の演奏技術
- 音楽活動の知識
- バンドや関係者とのコミュニケーション
- 人の楽曲を演奏することが苦にならない
- スケジュール管理
- ギャラの交渉
もし、こんなの楽勝!と思えるのであれば、まずは1つでもサポートの仕事を入れてみましょう。
それから判断しても遅くはありませんよ!
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